逆側が痛くなる?「中枢性感作」(ちゅうすうせいかんさ)について
前回、身体を動かす役割を担っている「神経」という存在について触れてみました。
前回の記事>>【連載】治療の専門家・木村が考える、”知っておきたい神経の知識”
今回は、誰もが一度は経験して事がある?と思う症状を神経のサイドから見てみることにしてみましょう。
実際に起こりうるケース…「あれ、反対側も痛くなってきた?」
今回の話題を実際に例を挙げて考えてみましょう。
「転んで足を捻ってしまい、右足の外側に痛みが出てしまったAさん」を想定しましょう。この場合、右足の内反捻挫という状態が考えられますね。この怪我をしてしまった経験は多くの方にあるのではないでしょうか?
さて、順調に右足首の状態は回復してきて、痛みの具合のかなり軽減してきたAさんには、別の悩みが出てきてしまいました。
「右足の調子は良いんだけど、なんだか左足首の痛みが出てきて…」
なぜAさんのような悩みが出てきてしまったのでしょうか?今回のケースを神経のサイドから見てみましょう。
ポリモーダル受容器
今回、初登場の「ポリモーダル受容器」について、ます簡単に解説しておきたいと思います。実は、痛みの記事の時に「センサー」という言い方で紹介はしておきました。(興味がある方は探してみてくださいね)
ポリモーダル受容器は、身体の外から加わる種々の刺激に反応して、身体の中で反応を起こす多機能型のセンサーとしての役割を果たしています。
細かい内容を理解する必要はありませんが、このポリモーダル受容器が種々の反応を起こすこと、そして「炎症」や「痛み」に対し、深く関わっている事を知っておいて下さい。そして、今回紹介したポリモーダル受容器のような痛みに関係してくるようなセンサーをまとめて「侵害受容器」と言います。
感作現象とは?
感作という言葉も重要な言葉になるので、簡単に解説しておきます。
感作とは、入ってくる刺激に対しての反応性が高くなる事を指します。もっと簡単な言葉で言い換えると、温かいものを熱く感じたり、触れるような刺激に対して、痛みを感じてしまったりといった状態です。
この感作という現象を引き起こしてしまう要因となるのは「強く激しい損傷を起こすような刺激」です。今回の例で言えば、「転んで足を捻ってしまった」というのがこの強い刺激に該当するでしょう。
ここまでをまとめると、【転んで足首の捻挫によって、ポリモーダル受容器のような侵害受容器が活性化し、神経の感作が起きてしまった】というまとめ方になります。でも、ここまでだと、逆側の痛みの理由が説明できてませんね?
次の項で逆側の理由を見ていきましょう。
「中枢性」感作が原因だった
感作という現象は、何も末端だけに起こる症状ではありません。身体の中心部である「脊髄」においても起こる現象です。末端で起こってしまった刺激に対して、中枢である脊髄に神経の感作現象が起こってしまうと【反対側の神経において、酸欠状態を起こしてしまい、結果として逆側に症状を起こしうる】というのが、概要です。
文字だけだとイメージしづらいと思うので図を使っていきましょう。
図の左側のラットの左足に痛み刺激を加えて、その経過を見たものです。60分後の様子が右側になります。痛みを感じているエリアが濃い色で塗られています。一つの痛み刺激が逆側や尻尾のエリアにおいても影響を及ぼしている事がお分かりいただけるかと思います。これが中枢性感作という現象です。
かばっている影響も無視は出来ない
Aさんのような症状が出た時に、かばっているからという理由を思い浮かぶ方も多いと思います。今回のケースのように足の場合、いつもとは違う荷重で日常動作を送っていると思います。
そうすると単純に筋肉の疲労具合も普段とは違ってくるのも当然考えられます。中枢性感作の影響に加えて、活動量の増加という状況の合算によって痛めてしまったと考えるのが良いかと思います。
逆側の痛みを防ぐために
どうしても私たちは痛めてしまった側のみに目を向けがちです。今回のようなケースを防ぐためには正常な反対側のセルフケアの意識は重要になってきます。足であれば、逆側のふくらはぎの硬さが強くなってしまっていないか?肩であれば、問題なく挙げられる、回せるといった状態が保てているか?などといった意識の仕方です。
少し、専門的な話題になってしまいましたが、今回の話題は、私自身も勉強して「へえ〜」と思った内容だったので紹介させて頂きました。参考にして頂ければ嬉しいです。
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